空を飛べない天才たち 第1回

■デニス・ニコラス・マリア・ベルカンプ
Dennis Nicolas Maria Bergkamp
“空飛ぶオランダ人”の異名をとったのは、オランダの天才サッカー選手ヨハン・クライフ。その一方、“空飛ばぬオランダ人”と名付けられたサッカー選手がいる。
 その選手の名はデニス・ベルカンプ。現在もプレミアリーグアーセナルの選手として現役のプレイヤー。その才能は誰もが認めるところで、`98フランスでのアルゼンチン戦のゴールはまさに伝説。
 彼の“空飛ばぬ〜”というニックネームは、彼の“大の飛行機嫌い”に由来している。
 欧州のサッカーチームは月に一度、カップ戦といい国外のチームと遠征試合をするのが通常。ベルカンプは他のチームメイトが飛行機で移動する中、クルマで10数時間かけて移動する。そして、遠征への帯同を拒否することも少なからずある。
 噂によるとアーセナルと交わしている契約の中に“飛行機での移動が必要な遠征の拒否認める”という項目があるという。多分本当の事だ。おかげで、リーグでは常に上位を狙う位置につけているアーセナルも、カップ戦(チャンピオンズリーグとか)の成績は散々だ。
 この飛行機嫌いの理由には諸説ある。友人を飛行機事故で無くした説。もうひとつは、以前飛行機で爆弾テロ騒動に巻き込まれたというもの。真偽の程はわからないが、`94アメリカ大会では飛行機で大西洋を渡っているはずなのだ。飛行機嫌いはそれ以降の話なのかもしれない。
■代表引退の理由
 ベルカンプは、2002年W杯予選を前に代表引退を宣言している。もちろんマスコミ(当然ファンも)は、その理由を“日本まで飛行機に乗って行くのが無理なせいだろう”と書きたてた。ベルカンプは、インタビューでそれを否定するコメントを出している。「俺はそんな理由で代表チームから引退するんじゃない。まだ俺が必要だって言うのなら日本でもどこでも行ってやるさ。飛行機嫌いなんか克服できるんだ」(出自は不明)。
 しかしオランダは予選を勝ち抜くことができなかった。その理由? もちろんベルカンプが代表に戻ってこなかったからだ。
 アーセナルファンも、オランダ代表ファンも皆、口をそろえて言う「ベルカンプが飛行機嫌いじゃなかったら今ごろ……」。もちろん僕だってそう思っている。でも、マラドーナカントナが人格者だったら……というのと、“飛行機嫌いじゃなかったら”というのとではちょっとばかり意向が違う。まあ、ちょっとユーモラス(間抜け)だ。
 現在、オランダには有能なFWが綺羅星のごとく存在する。しかしベルカンプのように1.5列目としてチャンスメーカーの役割を果たせるFWは出てきていない。いまだにベルカンプを代表にという声は少なくない。

【関連サイト】
『The Dennis Bergkamp Trail』
http://www.thedennisbergkamptrail.co.uk/
ベルカンプにあやかり、W杯2002観戦のため飛行機に乗らずに日本までやってきたUKの3人旅行記(!?)。あんまり関係ないけど。