ポジティブ教について

下で話題になっている
http://d.hatena.ne.jp/guri_2/20080109/1199875970
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080111/1200020891
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20080112/1200101006
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080112/p1

ポジティブ教”についてだけど、y_arim氏が唱える、

あのような文章はある程度以上に恵まれた層、自分はダメだなあもっと頑張ろうと思える余裕のある層のあいだで流通し消費されるアイテムに見える。

とは僕はまったく逆の意見で、基本的にはあの手の自己啓発に群がる人たちのメンタリティは、自分も努力次第で成功できるという甘い幻想だけ抱き、何もしない人たち特有のものだと思う。

手を変え品を変え登場してくる自己啓発本成功哲学の類は、それを読んでも誰も成功者にはならないから、常にベストセラーに君臨するわけで、これに飛びつく人たちは、それらを目にすることで自分も上昇できるような気分になるが、決して上昇しない人たちだ。

いや、もっと種明かし的に言うと、この手の自己啓発やポジティブシンキング(GTDライフハック)などは個人が上昇するためのテクニックではない。

安い給料で、時間外にもサービス残業で目一杯働かされている現代の労働の状況において、そこからさらに生産性を高めるとするなら、あとは労働の質を高めるしかない。そのためには、労働者のモチベーションを高めればいいのだけど、現代のやりがい*1が剥奪された労働にやりがいを感じさせることは難しい。それこそ催眠術でも使わないと無理。

そう、その睡眠術に当たるものこそ自己啓発ポジティブ教というわけだ。

ホントに催眠術をかけたり、人格改造してしまうと問題があるので、あくまでも自発的にモチベーションを高めてもらわなくてはならない企業の側は、自己啓発を労働者に用いる。

つまり、企業側が給料を上げずにもっと働かせる方法として、自己啓発が重宝されていると言うこと。

こう書くと多少陰謀論めいてくるけど、少なくともこの手の成功哲学の元祖である“ナポレオン・ヒル”ものっていうのは、そういう意図の元で書かれたふしがある。

あと、

こういうweb色紙に感動できるくらいには充実した「平凡な人」たちがスピリチュアルとかのカモになるんだろうなあ、と嘆息した。

y_arim氏の言うとおりで(web色紙は笑った)、スピリチュアルというか、ニューエイジの基本概念である、「自分にはまだ導き出されていない能力がある」「自分が変われば世界は変わる」「今の自分とは違う本当の自分がどこかにある」というメンタリティが自己啓発の根底にはある。
この両者が同根というのは、オカルト・精神世界本と自己啓発本しか売れないという出版界の状況がそれを証明しているとも言える。

 

実は今僕が書いている本というのは、まさにこういったポジティブ教自己啓発がどのようなメカニズムで流行しているのかを考察したものです。
本全体のテーマは別にネット論ではないけど、上のURLに見られるような自己啓発だけでなく、GTDライフハック梅田望夫といったネット社会を覆うポジティブ教がどのようなメカニズムで動員されているのかみたいなことを種明かしします。

本が出るのは来月で、まだAmazonなどには登録されてませんが、とりあえず話題に乗っておきました。

【携帯版】思考は現実化する

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*1:具体的には創意工夫や将来的な昇給のビジョン