マツケンサンバはゲイカルチャー? あとヴィレッジ・ピープルの話

地獄変00さんのこのエントリがおもしろかった。
■産経Webの「世界も注目、マツケンサンバ」にツッコミ!■地獄変00)
産経の誤訳の話。

ジョン・ウェイン(西部劇で有名だった超大物俳優)がカウボーイの格好でコミカルなパフォーマンスをやっているようなもの

ニューヨークタイムズの記事を上のように産経が訳していて、一見正しそうなマツケン評だけど、記事の原文は全然違うという話。正しくは、

ジョン・ウェインがヴィレッジピープルのカウボーイになっているようなもの」

だろうという指摘。まずこれがひとつ。
そして、このニューヨークタイムズの記事内容なんだけど、地獄変00さんのエントリによると「マツケンサンバをやたらとゲイのイメージと絡ませている」というものらしい。
日本の理想の男性像が変化したからマツケンサンバが流行った?地獄変00)
なるほど、マツケンサンバの流行と日本の理想の男性像の変化を関連付けた記事になってる。
僕もマツケンが流行った背景と日本人の男性像の変化に関連があるってのは言い過ぎかと思うけど、マツケンサンバがゲイカルチャーだっていう指摘はほとんど当たってるんじゃないかと思う。いままで気付かなかったけど、そこは真っ当な指摘だよなあ。
まあそれはともかく、ヴィレッジ・ピープルのキャラクターを知ってるか知らないかというポイントは日米間の大きな文化ギャップかも。ブログ界広しといえども、この領域(ゲイではなくディスコね)は僕の専門分野ですな。
ほい、ヴィレッジピープルのカウボーイはこの人。



彼らはディスコ・フィーバー真っ只中の1977年に結成されたボーカルグループ。ということになってますが、実のところは、ちょっとニュアンスが違う。プロデューサーのジャック・モラーリ(なぜかフランス人)がヴィクター・ウィリスという歌手を売り出すため無理やりグループとして売り出したみたいな感じ。
メインボーカルのヴィクター以外のメンバーは、面子を揃えるため適当にゲイ・ディスコから連れてきたゲイのダンサーたち。グループ名の“ヴィレッジ”とはゲイ・ピープルの多いクリストファーストリートがあるグリニッジ・ヴィレッジのこと。ダンサーたちもそこから連れてきたから“ビレッジ・ピープル”なわけ。なので、少なくともメインボーカルはゲイではない。
ディスコがゲイ・カルチャーだという話はこのブログで何度も取り上げてきてるけど、このヴィレッジ・ピープルは悪ノリというか、パロディ的にゲイを扱ったグループ。
代表曲「YMCA」は「Young Man's Christian Association」の略だけど、同組織が運営する若者向けの安価な宿泊施設のことで、実情はゲイのハッテンバを歌ってる。ペットショップ・ボーイズもカバーした『ゴー・ウェスト』は、西部開拓の歴史ではなく、ゲイの都サンフランシスコを目指そうという意味。『イン・ザ・ネイヴィー』(こちらはピンクレディーがカバー)は、「海軍に入ろう!」って説明しなくてももうわかる? 彼らの曲はそういう内容のものばかり。

ちなみに6人のメンバーにはそれぞれ警官、カウボーイ、水兵、肉体労働者、バイカー、インディアンとギミックが割り振られています。このキャラ立ても説明不要?
参照:『VILLAGE PEOPLE』Everybody, Clap Your Hands!

彼らのこういうギミックはアメリカではよく知られていて、いまだにネタで使われる。なので、今回の産経みたいなヴィレッジ・ピープルがらみの誤訳は朝日もやってる。
パウエル米国務長官が「YMCA」を熱唱■(ABC振興会)

ここでは、パウエルがヴィレッジ・ピープルの建築作業員のパロディをやったのに、朝日の訳では触れられてなかったみたい(元記事は消えてる)。
マツケンもそうだけど、そのネタ元自体がゲイ文化だなんだっていうのはたいした問題ではなくって、結局そんなことを知らずとも楽しむというところまで昇華されている(ネタにされてる)のがヴィレッジ。扱いとしてはドリフみたいなものか?
ちなみにヴィレッジ・ピープルはディスコブームが去ったあと、こんな風にイメチェンを図ります。

ニューロマ。これは80年代英国のゲイカルチャー。節操がないです(笑)。
話をマツケンに戻すと、こんなエントリもあった。
マツケンサンバはカミング・アウト・ソング(カトラー:katolerのマーケティング言論)
偶然だけど、ここは最近よく見るな。bloglinesにとーろく!

ベスト・オブ・ヴィレッジ・ピープル

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