人に歴史あり、レコードにジャケットあり

 この前、NHK-BSでシェールのコンサートの放送を観た。むやみやたらとポジティブな雰囲気を漂わせながら淡々と持ち歌を唄うシェール……。
 以前、自分の音楽遍歴を書いたけど、60年代のビルボードを子守唄代わりに聞かされて育った僕にとって、シェールと言えばあくまでも元ソニー&シェールのシェールだ。

 ソニー&シェールを知らない方に説明すると、日本でいえばトワエモア(それすら知らない?)のような朴訥としたフォークデュオ(相方のソニーは当時の夫)だった。曲でいえばキル・ビルのど頭でかかるナンシー・シナトラ『バンバン』は元々このソニー&シェールがヒットさせた曲だ。
 そのシェールがフォーク的なイメージをがらっとチェンジさせたのが1979年の『誘惑の扉(Take me Home)』という曲だった(これは駄目ジャケ100選に入れておこう)。

当時ドナ・サマーとヴィレッジピープルといったディスコ・ミュージックで巨万の富を得たカサブランカ・レコードが、落ち目になっていたシェールにディスコナンバーを歌わせた。これが当たり、落ち目だったシェールは再び生き返り、上で触れたように、現在のポジティブなキャラを得たのだ。
僕はよく知らないけど、80年代にシェールは女優としてたくさんの映画やTVドラマに出演し、スターの座を手にしたようだ(1987年の『月の輝く夜に』でアカデミー主演女優賞をとってるんじゃん!)。
月の輝く夜に [DVD]
 日本では彼女の活躍はあまり伝えられないが、米ではシェールは幅広い年代の女性に支持されるスーパースターだ。多分、最大のヒットである『Believe』(1999)では、サイボーグのようないでたちでボコーダーを通して歌っている。ここでのシェールのキャラクターはもはや女性どころか、人間であることすら超越しているように見える。このときシェール53歳。ちなみに僕は、このシェールに80年代以降のユーミンのイメージを重ねて見た。ユーミンのステージングがシェールの影響下にあるというのは間違いない(いや勝手な推測だけど)。



 アメリカの女性シンガーに、シェールのような“スーパー・ポジティブ”は少なくない。その典型は、日本でもおなじみのスーパースター、オリビア・ニュートン・ジョン
オリビアを聴きながら』のオリビアはもちろん彼女のことなんだけど、この歌の中で唄われている“オリビア”の曲とは、最大のヒット曲『フィジカル』(1981)ではないのだけは確か。元々カントリー・シンガーで70年代には『春風の誘惑』のようなかわいらしいポップソングを歌っていたオリビア。しかし、30歳を超え可憐さでは勝負できなくなった彼女が打ち出したのがディスコ・ナンバーの『フィジカル』だった。レオタードに身を包んだお色気(死語)PVは誰でも一度は見たことがあるはず。この曲で“スーパー・ポジティブ”のイメージを獲得することでオリビアは転身に成功する。ちなみに『フィジカル』の邦題は『虹の扉』(シェールのディスコナンバーは『誘惑の扉』ね)。
 これらのことから米の女性歌手は“ディスコ”を演ることで転身を図り、“ポジティブ”なキャラクターのスーパースターへと成長を遂げるという構図が見えてくる。ここから先を考えるのは社会学の領域なので僕は触れません。
最期に『フィジカル』の訳詞を引用して締めくくろうと思います。

『フィジカル』by オリビア・ニュートン・ジョン


物理的になりましょう
物理的 私は物理的になりたい
得ましょう 物理的
あなたの身体会談を聞かせて
あなたの身体会談を聞かせてください
動物と動物を得ましょう
(対訳 by エキサイト翻訳)
【Cherのプロフィール】
http://wmg.jp/artist/cher/
【参考サイト】
http://takamatsu.cool.ne.jp/divamania/lastdance/takemehome_cher.htm
長文失礼! っていうか、おわかりかと思いますが、最後の直訳を載せたいが為のシェール、オリビア論です。このエキサイト直訳はネタとして使えそうです。
というわけで、オモロイ直訳歌詞大募集! おもしろいのがあったらぜひトラバください。

反応ありました!
その1『常に、賛成投票、おお、あなたの根底を揺さぶる』(AC/DC
http://d.hatena.ne.jp/cliche/20040923#p2
その2『その季節の時間』 http://d.hatena.ne.jp/julio/20040923#1095952237
ノストラダムスの予言のような含蓄があります。