ケータイ小説ノススメ

最近ケータイ小説を読んでます。とりあえず読んだのはこの2冊。

この涙が枯れるまで

この涙が枯れるまで

星空

星空


上が第一回日本ケータイ小説大賞優秀賞作品。下が審査員特別賞受賞作品で、どちらもおもしろく読めた。
 
『この涙が枯れるまで』は、学園生活を描いたラブストーリーもの。出会い、見初め、友人の横恋慕・確執・雪解け・友情回復、告白、すれ違い、誤解解消、成就というラブストーリーの基本要素で展開するものの、これらが高校1年の初登校日からたった2日の出来事というのが新鮮。成就後に登場人物が増え、主人公はさまざまな恋愛を経験していく。途中で人称が代わったりします。それで、第二の主人公になる少女は、両親が死んで孤児院育ちなんですが、その子が自己を確立していく過程の話が、そのまま彼女がケータイを手に入れるまでの話である辺りの描写が秀逸。

『星空』は、13歳の少女・流奈と18歳の少年・翼の生き急いでしまったラブストーリー。紡木たく系。嘘、紡木たくは読んだことがない。翼君はニヒルでシャイなロマンチストで、ルックスの描写がなければ、普通にジャニーズ系の美男子を想像するのに、「どヤンキー顔」という描写があるので、その違和感にちょっと引っぱられ過ぎた。しかし、その辺のセンスの部分がこの本のおもしろさでもあり、リアルな肌触りにもなっている。物語に登場しない人物を詳しく描写してみたり、逆に重要な人物がなんの説明もなく突然登場したりと、その辺はご愛敬。
 
どちらもケータイというツールを、うまく使っていることに感心した。恋愛の機微だったり、アイデンティティの萌芽といった小説の軸を、ケータイという道具だけで描いている。稚拙な部分は確かに多いが、そこに関してはまったく稚拙じゃない。

そして、上二作の共通点としてあげられるのは速度。通常の恋愛小説であれば中盤以降に設定されそうな恋愛の成就のタイミングが上の2作品では、冒頭に来ている。物語中の時間だと出会った翌日には二人の愛は最高潮に達する。後者ではもう結婚の約束までいってしまう。すれ違いというのも、メールの返事がすぐに来なかったとかいうレベルのもので、おそらく半日も返さなければその恋愛は、すでに失恋であるといえるくらいのスピード感を持っている。

それと、描かれる男がとても保守的。どちらの男の主人公も、“お前をしあわせにできるorできない”ということを常に考える人物として描かれる。10代なのに。30代でも考えたことないのに。
そして独占欲が強く、一途で浮気もせず、女を命がけで守る。ここら辺は湘南乃風邪的。

この分野の批評はちゃんとやればきっとおもしろい。これからも読み進めようと思う。