ヒップホップにおけるカンフー映画、ブルース・リーの影響

gotanda62005-01-14

なかなか読み終わらないネルソン・ジョージの『ヒップホップ・アメリカ』ですけど、「カンフー映画とヒップホップ」という章があるので少し紹介。

カンフー映画は七十年代末という時代性にかなった勧善懲悪ものとしてアメリカの西部劇に取って代わるジャンルとなった。

ネルソン・ジョージは「七十年末という時代性」のひと言で片付けてるけど、この時代になぜカンフー映画が流行ったのかは、考察の価値はあると思う。このテーマはまた後から振り返ってみるとして、ヒップホップとカンフーの関係について。
ネルソン・ジョージは、「カンフー映画が提起したものは、あくまでも非白人的で、非西欧的な格闘の基準であり、枠組みだった」として、その「カンフー界の小さな巨人ブルース・リーが「非白人のイコン」となったと表現している。つまり、黒人たちは同じ有色人種としてリーらカンフーのマスターたちに肩入れをしたとの解釈。
そして、ヒップホップのカンフーからの影響として、ヒップホップの父のひとりであるグランドマスター・フラッシュの「グランドマスター」という名の由来が、カンフー映画が元である(「老師」?「師父」?)ということと、ウータンクランのメンバーの名前や世界観(武術の慧眼を開く三十六番目の房を探している云々)には香港映画(少林寺など)の影響が深く根ざしていることを指摘している。これらはもっと深いところまで掘り下げて欲しいテーマなのに、その程度でお茶を濁しているのが残念。ヒップホップ・アメリカ
 
一方、当ブログの最重要テーマであるディスコに目を移すと『カンフー・ハッスル』(未見)の名を出すまでもなく、カンフーとのかかわりは少なくない。
カンフーブームの頂点と思われるのはブルース・リーが主演した『燃えよドラゴン』が公開された1973年。この年はディスコも大ブレイク直前といっていい時期。フィラデルフィア・レコード(PIR)からMFSBが登場し、KCサンシャインバンドがデビューした年。もっといえば、テクニクスSL-1200が発売されているし、僕(ディスコ博士)も生まれている(これはどーでもいい)。時代的にもカンフー映画とディスコは、ほとんどかぶっている。
カンフー・ハッスル』の宣伝フィルムなどでも使われている元祖“カンフーディスコ”であるカール・ダグラスの『吼えろ!カンフー(原題:Kung Fu Fighting)』は、1974年12月ビルボード全米ナンバー1を獲得、翌1975年には年間ビルボード14位に輝いている。このカール・ダグラスはジャマイカ出身のイギリス人で、英国チャートでもナンバーワンを獲得している。だけど、この人は一発屋で、その後『踊れ!ドラゴン』、『シャンハイ・カンフー』などを発表するがフェードアウト。一方、カンフーはディスコ界の小ブームとなり、『チャイニーズ・カンフー』バンザイ*1、『ゲットー・カン・フー』モーディー・ヴェージョン(ドイツの謎のディスコバンド)らが追随している。ミルマスカラスのテーマとしてもおなじみジグソーの『スカイ・ハイ』も元々は『ドラゴン・フライズ』というカンフー映画で使われたのがはじめとのこと*2。なぜかディスコ界のカンフーものはなぜかすべてアメリカ以外から生まれている。
ちなみに「謎のディスコバンド」が多いのは、当時のライナーにそうかかれているから。当時は日本の版元となったレコード会社ですら、素性もよくわからないディスコバンドのレコードを大量にリリースしていた。それはディスコというムーブメントが匿名性の強いものだったということなんだけど、その話は前に書いたっけ? インディーの先駆けとしてのディスコという話は後日改めて考えてみます。
このテーマは、カンフー映画の歴史から振り返ってみるとまた違った見方が出来そう。あと黒人がなぜカンフー映画が好きなのかについての考察も深く掘り起こしていきたいので、「つづく」という事にしておきます。
 アメリカの夜 (講談社文庫)
あと、阿部和重のなんたら賞受賞にかこつけて、文学とブルース・リーについても考察してみたかったのですが、阿部和重以外にブルース・リーが出てくる文学を知らないので却下しました。
【おまけ】ブルース・リー映画のサントラ集
http://www11.big.or.jp/~dragon/discography/disc_ep.html

【追記】グランドマスター功夫師父がブルース・リーの台頭とカンフーブームの時代背景に関する考察を書いてくれてます。
http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20050114

ソウル・トレイン~24フレイヴァーズ

ソウル・トレイン~24フレイヴァーズ

*1:フランスの謎のディスコバンド。ジャンボ鶴田のテーマ曲として有名

*2:コメント欄も参照のこと