『アトミック・カフェ』と鉄腕アトムと『華氏911』
僕なんかはマイケル・ムーアが出てくる前から注目してた映画『アトミック・カフェ』が9月に公開されるようです(小倉智昭的に言ってみた)。
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鉄腕アトムが『アトム大使』として世に発表されたのが1951年。この年アメリカでは原子力発電がはじまり、“原子力”は新しいエネルギーとして注目されていた。1953年にはアイゼンハワーが国連で“原子力の平和利用”を訴える演説を行なう。“原子力”を平和的に利用するという機運が高まっていたのがこの時期。人一倍科学への見識も深かった手塚治虫でさえ、これらの機運のシンボルとして“鉄腕アトム”を描いた。当時の世論は「原子力への期待」方が主流派だったということ。
『アトミック・カフェ』ではそんな時代のニュースフィルム、プロパガンダ映像などが使用されている。そのフィルム相当に見当違いな認識に基づくもの、明らかに世論操作を意識したプロパガンダ的なものであふれていた。
こういった原子力への認識が一転するのは、1954年の第五福竜丸の被爆以降のこと。ちなみに、同年秋にはこの事件を契機に放射能により巨大化した恐竜『ゴジラ』が公開*1された。
手塚も原子力の危険性が問われる時代になると、科学に対する不信が大きくなっていき、それが作品にもあらわれる。ベトナム戦争の頃には絶望の深まりから、ついにアトムをメコン川に沈めてしまう(!)。
で、『アトミック・カフェ』のリバイバル公開は、やはりマイケル・ムーアに絡んでのものだ。かつて『アトミック・カフェ』を観たムーアは、『アトミック・カフェ』の監督(というか編集)の1人ケヴィン・ラファティに連絡を取り、「俺に映画の撮り方を教えてくれないかい」と教えを請い、ドキュメンタリーの撮り方を教わったという。しかも、このケヴィン・ラファティという人物はブッシュのいとこ。いろいろな因縁が絡み合ってます。このくだりは『アホでマヌケなアメリカ白人』に詳しいです。
- 作者: マイケルムーア,Michael Moore,松田和也
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【参考文献】
- 『アホでマヌケなアメリカ白人』
マイケル ムーア/著 松田 和也/翻訳 - 『「核」論―鉄腕アトムと原発事故のあいだ』武田徹/著
- 週刊アスキー連載記事『鉄腕アトムのいた21世紀』(福冨忠和/著 第9回、第10回『アトムの原子力問題』2003年)