竹中労のムック

もう一個は竹中労の死後20周年を記念したムック。
僕が見ている竹中労と、ほかの執筆者が見ている竹中労がまったく違うんだということに驚きました。まあ、ある程度想定済みではあったけど。
僕は、竹中労の単体単行本としては最初の仕事になった『団地七つの大罪』を引きながら、団地自治会長としての竹中労について書きました。
何について書いたかがわかるように冒頭の部分だけ引用しておきます。

竹中労---没後20年・反骨のルポライター (KAWADE道の手帖)

竹中労---没後20年・反骨のルポライター (KAWADE道の手帖)

 辣腕ルポライターであり新左翼の闘志にしてアナーキスト。さらによろず評論家、芸能史研究家であり大衆音楽批評家。多様な肩書きを持つ竹中労に、さらに加えたいのが“高根台団地自治会長”という肩書きである。
 竹中は『完本美空ひばり』において、大衆的な存在であるがゆえに知識人たちに相手にされない美空ひばりを大いに擁護したが、団地もまた庶民との距離感で捕らえるには格好の材料だ。多くの庶民が暮らす空間でありながら、建築家という知識階層が団地を論じることはない。磯崎新の言を借りると「曲がりなりにも建築家を名乗っているのならば、大工に任せておけばよい住宅をどうしてつくるのか」(『住宅の射程』磯崎新藤森照信安藤忠雄伊東豊雄、TOTO出版)ということになる。
 本稿は、出世作『定本美空ひばり』を著す直前、そして太田竜平岡正明新左翼のイデオローグたちと出会う前の若かりし竹中(といっても三〇代に差しかかっているが)を取り上げる。ホームズシリーズにおけるヤングシャーロックよろしく、“ヤング竹中労”は、いかに団地に立ち向かったのか。そこにスポットライトを当ててみたい。