『昭和三十年主義』読んだ

昭和三十年代主義―もう成長しない日本

昭和三十年代主義―もう成長しない日本

普通に生きることの重要性みたいなテーマは、これまでの浅羽と基本的には変わらないが、これまで読んだ浅羽本の中でも圧倒的におもしろかった。昭和回顧ブームの分析を足がかりに、もう経済成長の夢が見られない現代社会のいろんな側面を露わにしている。吉永小百合主演の『いつでも夢を』と宮部みゆきの『模倣犯』が比較されながら、「全能感」や「肥大した自尊心」に煽られた職業感が語られる辺りがたまらない。
 
あと、本書の中盤辺りでは、言葉こそ違うものの、ポジティブ強についても触れられる。
自己啓発、ステップアップを忘れたくないと念じている人」(=つまちポジティブ教信者)が重宝されるのは、企業が彼らを“自主的に研鑽する主体性の高い個人=ビジネスパーソン”と捉えているからではなく、彼らがむしろ「組織の部品となりきれる労働者」だからなのだというのが浅羽の説。
浅羽はそれを、高校の専門科などで手に職を得たスペシャリストよりも、普通高校で何も得ていない人間の方が就職時に有利であるという日本の仕組みとの比較で指摘する。
普通高校の方が就職が有利なのは、「役に立たない勉強を教師のいいなりに詰め込む訓練」により作られた「組織の部品」だから。主体的に技術を得た人間より、「部品」が大事なのだ。
カルスタ左翼的な見方が強過ぎるかとも思うけど、確かにそんな面はあるような気がする。
 
それとこの本で示される「地元つながり」関連の話は、僕がつい先週入校したばかりの次の本(発売は6月10日予定)のテーマとかなりかぶっていて驚いた。もう少し早くこの本が出ていて欲しかった。