『音楽未来系』読んだ。

gotanda62005-03-25

まだ難しいところは端折って読んだ感じだけど、とても刺激を受けたので感想をメモ。

音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ

音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ

本のタイトルに惑わされないようにしなきゃだめで、実際の内容は音楽を記録することの歴史と、それにともなう音楽の受け入れられ方=「音楽観」の変遷というのが主な視点の本。
レコード、ラジオ、CDと新しいメディアを迎えるたびに既得権を巡る争いがあって、最近のCDの売れ行き減少、CCCDなどの問題で音楽産業の危機というけど、歴史を見れば何もこれが最初じゃない、っていうか日常茶飯?(アンゴル・モアちゃん風)
例えば1922年のラジオ法(米)では営利目的のレコード音楽の使用が禁止された。

その背景には、放送局は音楽を流すのなら地元の演奏家を雇うべきだという考え方があった。したがってどの局も専属の音楽化を在籍させ、逆に音楽家の側からは、ラジオは雇用を拡大するものとして期待された。(P139)

加えて1942年の「録音禁止令」。

ラジオやジュークボックスに演奏の機会を奪われていると感じた音楽家たちが、一致団結してレコードへの録音そのものを拒否したという事件である。(P33)

ラジオという新しいメディアと音楽家側の争い。この利権争いが不毛だったのかというとそうでもなくて、上のようなレコード放送のロイヤリティを巡る争いの隙間を縫って出てくる勢力も生まれる。

1939年に新たな著作権管理団体BMI(音楽放送協会 Broadcast Music Incorporated)を設立する。BMIと契約したのは、当時ASCAPに加盟できなかった音楽家らを擁した新興のレコード会社であり、そこから表舞台に登場したのが黒人音楽だった。

その黒人音楽がのちに白人のティーンエイジャーに支持されるようになってロックンロールと呼ばれるようになる。っていうか油断大敵?(モアちゃん風、以下略)

演奏者とメディアの争い。この当時、立場が一番強かったのは音楽家側だったのかCCCDや輸入件といった最近の紛争では、消費者にも席が与えられたのかな。そいういう意味で音楽は少しずつ聞き手の側〜、とか言いたくなるわけだけど、この手の評論めいたものを挟んでないのが良いのかも。

あと「音楽観」音楽の捉え方の変遷という観点もおもしろかった。一例。

シンセサイザーサンプラーを駆使したポップスをどう思うかと質問されたギタリストが、自分のエレキギターを指して「これが本当の楽器だ!」と答えた。(P98)

これは「テクノロジーの受け止められ方について、音楽観の違い」という例。っていうか愛多憎生?
ディスコ史的にいうと、1979年の「DISCO SUCKS」には快楽主義への保守層からの批判という一面もあったけど、新しいテクノロジーに対する音楽観の違いという見方もできるか。
あと音楽観の話をもうちょっと狭い話に位相をずらすと、去年の「俺のロックじゃない」発言*1を思い出した。最近僕が考える「被差別音楽」的にも参考になった。音楽観の違いという話はおもしろいので、当ディスコブログでも当面の関心事として扱っていきたい。
あと、人によってこの本の感想がまったく違うのは、3冊分くらいの内容が一冊につまってるからかと思いました。

*1:ロックオデッセイで稲葉浩志のライヴ中に火災報知器を鳴らして捕まった男の供述