ミスティック・リバー

板橋のマイカルで鑑賞。
大筋は刑事、ムショ帰り、低賃金労働者に成長した3人の幼馴染みの物語。脚本の勉強をしている人、映画作家志望の人はぜひ観るべし。勉強になるポイントをいくつか。

まずは冒頭のシーンでセメントに自分の名前を落書きしたため、30年後にも残っているというくだり。誰が誰という名前を覚える作業の肩代わりをしてくれる。独立したシーンではなく、このいたずらが誘拐事件の発端として機能もしている。洋画の場合、最後まで誰がデイブで、誰がジミーなのかわからないことも少なくないので、これはわかりやすかった。セメントのシーンは原作にはないんだろうなあ。推測だけど。

次は、省略の上手さ。少年時代の誘拐シークエンスは、連れていかれてたシーンと、逃げているシーンだけで、そこで何が起こったか、その後どのような顛末を辿ったかを一切描いていない。次のシーンには誘拐された少年が大人になって子供と野球の話をしている。省略することで観てる側を惹きつけ、のちに彼のトラウマとして少しづつ判明していく。トラウマの部分を映像化していたら台無しになっていた。

3つ目は、街を舐めるように空撮してパトカーの集まった公園まで行き着くカットに、第一発見者の通報の内容をプレイバックをかぶせている部分。地味なサスペンスになりそうな物語を空撮で気分を盛り上げながら、自然に事件の概要の多くを説明している。

テーマが重いだの言われてるみたいだけど、家族愛、すれ違った友情、幼少時のトラウマ、なんて別に特に重いとは思わないぞ。これで救われないって言ってる人はとても火サスなんて楽しめないだろうなあ。
あと、アカデミー有力候補って騒がれてるけど、いつも“アカデミー賞最有力候補”と呼ばれる映画の基準というのはよくわからないなあと思う。