もう専業ライターという職業は成り立たなくなる、もしくは「石田衣良化」について

モエリロンさんの、「ブログとライターの違い」について思ったこと。

私がブログあがりのライターであるために、「(紙媒体ではなくても)ブログで読めばいいじゃん」という批判は想定の範囲内*1でしたが、とうとう編集者の方にまで、「紙媒体とネットの違いは何か」という趣旨のことを言われてしまったので、ブロガーとライターの差異化は今後の課題になりました。

たしかに現時点ではブログで喰えそうな感じはしないのですが、ブログ開始からここまでが確率的に結構狭い道のりだったので、ここからプロのブロガーになるのも夢ではないような気がしています。甘いかな。
ブロガーとライターの違い『萌え理論blog』

あと、もいっこ、ある意味この辺の話題の発端でもある有村さんのこれにも。

* プロのライターであるお前がまずブログをやめろよ

実際に、これを規範としているライターは存在する。同僚にも、ブログはあくまで仕事を告知する場、名刺代わりとしてしか使用せず、それ以上の言論行為はすべて商業媒体でしか行わないというひとが複数いる。そして、ぼくも知り合いのライターに何度か釘を刺されている(そのとき持ち出された理由は、今回の件とはかなり違うものだったので、ここでは触れない)。
「自己批判してみるよ」『E.L.H. Electric Lover Hinagiku』

まず、プロのライターが無料のブログを書くことについて問題。

僕は元々実用系の無記名仕事がメインのライターなんだけど、ここ数年は名前を出して仕事をするようになり、自分の名前で本も出した。このような仕事はブログがあったからできるようになった。無記名の仕事が多かった時代も、単著を出したいという思いは強く、さんざん売り込みをかけていたけど、まったく取り合ってもらえなかった。

無記名の時代から記名の原稿を書くこともあったが、その記名原稿から仕事の依頼が来るケースはほとんど無かった。僕はアニメ関係の仕事を、本名で山ほどしているし、押井守にも神山健治にも大河原邦男にもインタビューしているけど、アニメ業界にいるライターの有村さんも僕の名前なんてかけらも知らなかったでしょ? 

一方、ブログを書いていることで、なんらかの企画につながったり、原稿依頼につながるケースは多々あったので、締め切りをぶっちぎってでもブログを書いてやろうと思っていた時期すらあった。なのでブログを書かないとライターとしてやっていけなくなるだろうという意識の方が強い。

 
あと、「プロのライター」というものに対して、ちょっと問題意識が違っている。記名で原稿を書くような専業ライター(つまり「プロのライター」)は、いま急速に喰えなくなっていて、下手すりゃ将来的には専業ブロガーよりも職業としてなりたたない(飯が喰えない)状況になりかねない。
今も昔もそうだけど、本を出している物書きの大半は、副業のライター。学校の先生とか経営者とかコンサルとか、他に本業がある人たち。金にならなくとも本を出すことが、本業になんらかのメリットがある人たち。
しかし、専業ライターはよっぽど売れない限り、書き下ろしで本を出すことで時間を取られ、むしろ収入面ではマイナスになりかねない*1。定期的に収入が確保できる雑誌の仕事の方が割がいいが、その雑誌業界自体が衰退の一途。かつては連載をまとめたものが本になるというパターンがあったから専業ライターでも本が出せた部分があるが、いまどきそう滅多にあるものでもない。*2
しかも、雑誌業界は前よりも風通しが悪くなっているから、仕事は下の世代のライターにはなかなか回ってこない。それでもライターで食っていこうとするなら、ライターを通して副業をゲットしていくしかない。それをうまくやることを僕は石田衣良化と名付けている。
石田衣良化とは、自分がイケメンであることに疑いを持たず、本を出す時には帯にも表紙にも自分の顔を出すことをいとわないという努力を指す。そうして、チェックの黄緑のジャケットを着てワイドショーに出演することで、レギュラーコメンテーターという副業をゲットするのだ。僕はまだ本に自分の顔を出してはいないが、黄緑のチェックのジャケットはもう用意している。

恋は、あなたのすべてじゃない

恋は、あなたのすべてじゃない

目覚めよと彼の呼ぶ声がする

目覚めよと彼の呼ぶ声がする

*1:少なくとも僕はそうだ

*2:少なくとも僕の場合はそんな体験はない