はてなダイヤラーが選ぶサマーソング100選

gotanda62004-09-30

ふたりの夏物語杉山清貴&オメガトライブ

「12歳の夏は特別だ」といったのはスティーブン・キングだっけ? まさにこの曲は僕の12歳の夏に流行った歌。ちなみにこの前後の『ベストテン』のナンバー1獲得曲を挙げると、

となっていた。やっぱり自分の音楽の原体験はこの頃なのだと再確認。だって、上のレコード全部持ってるんだもの。
で、年表マニア的に解説を入れると、1985年(9月)はプラザ合意の年。プラザ合意による円高懸念で日銀がマネーサプライを上昇させたことからバブル経済が発生。つまり、85年とはバブル元年だったわけです。
「世は歌につれ」とはよく言ったもので、85年6月発売だから正確にはバブル前夜*1に発売された『ふたりの夏物語』には、バブルの予兆が見え隠れしている。曲の出だしを一部引用してみる。


流星にみちびかれ
出会いは夜のマリーナ
ルームナンバー砂に
書いて誘いをかけた
キールのグラスをほほに当てて
ホンキ?と笑った人魚(マーメイド)
康珍化/作詞
マリーナとは、ヨットの係留場or海岸沿いの遊歩道のことだけど、あとに砂が出てくるから、ここはもう砂浜なのでしょう。ビーチという言葉を使わなかったのは、ここが人工的なリゾート地であることを意識してのこと。これは重要。この曲はいわゆる“リゾート・ソング”(リゾ・ラバって言葉知ってる?)の典型だ。
ちなみにこの直後の1987年“総合保養地域整備法”いわゆるリゾート法が制定される。これに踊らされ、国土の約2割、3割がリゾート地になるといわれたぐらいに、リゾート開発の構想が全国各地で立ち上がることになる。これらがバブル崩壊後どうなったかは周知のごとく。*2
歌詞の解説を続ける。“キール”とは白ワインをベースにしたカクテルだけど、この歌で使用されるにふさわしい80年代を代表するカクテル。この手のおしゃれ系カクテルが本格的に普及したのも80年代のカフェ・バー・ブーム以降のこと。「キール・ロワイヤルですね?」っていう東幹久のCMがあったけど、これは91年のサントリーのCM。
 
続いては歌の後半部分のハイライト。ここでは、ひと夏で終わった恋であることが明かされていく。

エリなしのシャツに
10月が来ても
夏は終わらない
夏を謳歌しているのかと思ったら、最後は10月になっている。これはEW&Fの『セプテンバー』のように、あとから「あの頃」を懐かしんでいる歌ということになる。
歌詞に戻ると、「エリなしのシャツ」とは、おそらくTシャツではなく、スタンドカラーのシャツのこと。70年代のデカい襟の反動なのか、80年代には襟無しのシャツというのがあった。まあ、今でも探せばあるんだろうけど。
“10月になってもすでに終わった夏の恋の中で生きようとする男”。これはそのまま、バブルの時代が終わっても、リゾート地(ハワイ)で80年代を生きようとする杉山清貴の姿になぞらえることができる。実際の杉山清貴はいつもアロハなんだけど、僕のイメージの中での彼はいつも襟無しのシャツにサングラスだ。

バトンですが、我がディスコ・カンファレンスの研究員仲間のid:andre1977さんに廻したいのですがいかがでしょう?

*1:実際には1980年代前半にも好景気の気運はあったし、バブル経済的文化はすでに生まれていた

*2:このときに計画された第三セクターによるリゾート施設などはいまだその屍を晒しているし、シーガイヤのように外資に安く買い叩かれたりした。