EW&Fのドキュメンタリー『シャイニング・スターズ』

gotanda62005-06-04

発売直後に買っていたアース・ウインド&ファイアーのメンバーのインタビューを中心にまとめたドキュメンタリー『シャイニング・スターズ』をやっと見た。
ディスコの精神史的に重要な点が2点。
まずは、モーリス・ホワイトアイザック・ヘイズが同級生だったということ。このあまりに興味深い事実に関しては、ほとんど触れらていなかったのがとても残念。
もうひとつは、モーリス・ホワイトが『宇宙のファンタジー(原題Fantasy)』について語っているこの部分。

「曲名だけ決まって歌詞には時間がかかった。歌詞と結びつけることがなかなかできなくって。
<中略>
未知との遭遇』を見た時だった。宇宙の感じが心の中に響いて目が覚めた感じだった。

つまり『宇宙のファンタジー』は『未知との遭遇』の影響でかかれた曲だったということを、本人がはっきりと語っているのだ。この曲が発表された1977年と宇宙に関する話は、以前『ディスコと宇宙年代記』というエントリで触れているのでどうぞ。
 
このドキュメンタリは情報はそんなに詰まっていないのだけど、それなりにおもしろかった。
リズム&ブルースの死』や『ヒップホップ・アメリカ』で知られる黒人の音楽ジャーナリストのネルソン・ジョージが出てきてアースについてあれこれ語るんだけど、彼が、
「彼らは黒人の知性を代表するバンドだ」
といってるのにもかかわらず、アースの連中はギタリストをワイヤーで吊って空中で演奏させたり、ステージにでかいピラミッドを吊ってマジックをやったり、黒人の知性を誤解させかねないことを連発。
また、モーリス・ホワイトがルーツであるアフリカへの思いを語り、エジプトの話をしているかと思いきや、ネルソン・ジョージのインタビューに切り替わり、
「黒人文化とピラミッドの間には何の関連もない」
と断言。狙ってるんだか狙ってないんだかよくわからない笑いのポイントがたくさんある。
あと、ベース担当でモーリスの弟であるバーディン・ホワイトがディスコに付いて語っていたのをチェック。

俺たちは当時あせっていた。ディスコなんか8ビートの繰り返し。それだけだ。ブギー・ワンダーランドは違う。メッセージソングだ。

(笑)。これに笑ってしまったのには理由がある。ボーカルのフィリップ・ベイリー はインタビューでこんな発言をしていたから。

「あの頃(80年前後)は僕たちの曲のどれもがディスコ風にアレンジされた。それで思った。いっそのこと自分たちで本物のダンス・ミュージックをやろう、とね。僕たちのミュージック・シップを犠牲にしないで、1曲。それが『ブギ―・ワンダーランド』だった。EW&Fが踊ることを意識したのは、あれだけ」(引用元:『TITLE』2003年12月号/text:Kazunori Koudate フィリップ・ベイリーインタビュー)

ちなみに、彼らが自らをディスコバンドとは思っていないというのは本当で、このドキュメンタリーでもアースが売れ線を意識して作った曲は『レッツ・グルーブ』のみだといっている。もちろん彼らの言うディスコとは70年代後半に連発された安っぽいダンスミュージックのことを示すごく狭義の“ディスコ”のことであるが、僕にいわせるとモーリス・ホワイトが持つ革新的、先鋭的な精神こそが“ディスコ”のすべてである。
全体を通してモーリス・ホワイトのワンマンぶりやいかれてる部分がまったく描かれていなかったのが残念。個人的には彼の自叙伝、伝記があるとすればマイルス・デイヴィスジェームス・ブラウン並におもしろいものになるのは間違いないのだけれど……。
「精神性が高いから、歌詞が観客の心に響くんだ」(モーリス・ホワイト